第19章 スサノオ・アマテラス・ツクヨミと大蛇(おろち) ✴︎
別段何もおかしい所はなさそうだ。
綺麗な青い瓦屋根。六人が最初に見た時と同じようにそこにある。
「七瀬! 猪頭少年! 君達も怪我を見てもらってくれ!」
その時、杏寿郎が二人に声をかけた。
「伊之助、行こう?」
「おう……」
『何だろう、伊之助がこんなに気にするなんて』
七瀬は少し後ろ指を引かれる思いだったが、二人は炎柱達の元に急いで向かった。
そして恋人の帯皮(ベルト)に、ぶら下げられたままのアルミ製の水筒に気づき、質問を投げかける。
「あ、杏寿郎さんの分のお酒余っちゃいましたね…どうしますか?」
「そうだな……勝利の美酒として、父上と飲むのも良いやもしれん」
「それ凄く良いと思います。参加出来ないのが残念です…」
彼女は十七歳だ。二十歳になるまで後三年ある為、まだお酒は飲めない。少し寂しい思いを感じていると ——
「三年経ったら、酒を父と俺と君とで飲むか?」
恋人からの願ってもいない提案だった。みるみる内に、七瀬の顔が綻ぶ。
「はい!!是非!!」
「また君との楽しみが一つ出来て嬉しい」
こうして炎柱達は無事に八岐大蛇を討伐し、赤坂氷川神社を後にした。
余談だが、七瀬の腕の擦り傷は、血は少ししか出なかったが、皮膚はそれなりに深く切っていたようで、蟲柱のしのぶに二針程縫って貰った。
「こういう傷はなかなか厄介だったりするんですよ…煉獄さんに感謝しないといけませんね」
「はい、本当にそうですね」
七瀬は改めて彼に対する尊敬の念を強くしたのだ。
『杏寿郎さん……いつもありがとうございます!! 』