第19章 スサノオ・アマテラス・ツクヨミと大蛇(おろち) ✴︎
杏寿郎に指摘された七瀬は意識が左手に向いた為、急にズキズキ痛み出した。
「出血は少しだけですし、大丈夫ですよ。ほら止血もすぐ出来ました!」
彼女がグッと力を入れると、滲んでいた血がピタッと止まる。
「ダメだ! 念の為、胡蝶に診てもらいなさい。外から見える状態と中の状態が違うと言う事は、往々にしてあるものだぞ? 」
「ふふ、そんなに心配しないでください」
「俺は師範だが、その前に君の恋人……故に心配するのは当たり前だ!」
「はい、じゃあ、しのぶさんに診てもらいます。ありがとうございます…」
「うむ!」
再度、七瀬の頭が柔らかく撫でられた。
そこへ「ムーン」とかわいい声が彼女のすぐ側から聞こえた、と思えばギュッと七瀬を抱きしめてくる腕が二つ。
禰󠄀豆子である。
「七瀬ちゃん、俺すげぇ足が震えているんだけど、これって何?」
続いて目をぱっちりと開いた善逸が、炭治郎に肩を貸してもらいながら禰󠄀豆子の後ろからゆっくりと歩いて来ている。
「……善逸、覚えてないの?」
「え?何の事?」
「あんなにはっきり話してたんだぞ。本当に覚えてないのか?」
「なになに? 炭治郎まで。ねえ、俺何したの? 」
首を傾げる善逸に、炭治郎も突っ込みを入れるが、どうやら本当に自分がやった事を覚えていないらしい。
『やっぱり目は覚めてなかったんだ……』
「凄かったんだよ、善逸。かっこよかったし!」
「ええ〜そうなの?? なんか照れるね〜」
彼は体をくねくねしながら答えるが、その動きのせいで足がもつれ、善逸に羽織を引っ張られた炭治郎と二人で尻餅をついてしまう。
「あーあ、大丈夫??」
七瀬は自分を抱きしめていてくれた禰󠄀豆子を体からゆっくりと離すと、後輩二人の手を掴んで立ち上がらせた。
「あ! それとさ、大蛇って結局どうやって倒したの?」
『お酒投げつけた事も覚えてないんだ……あんなに意識はっきりしてたのに』