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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第19章 スサノオ・アマテラス・ツクヨミと大蛇(おろち) ✴︎




「悪鬼滅殺」と刀身に彫られている炎刀。

これを右肩に構えている杏寿郎からは、凄まじい闘気がもうもうと放たれている。
その姿が「太陽神」と呼ばれる事もある天照大御神と重なった。


「玖ノ型 —— 煉獄!! 」

暗い夜でも彼の姿だけは日輪のように。夜の終わりを告げる朝日のような炎龍が大蛇に向かって放たれた。

ドォォォン!!と言う耳をつんざく音、そして爆風が辺りを包む。
七瀬は思わず両手で耳を塞ぎ、目も一瞬だけ瞑ってしまった。

霧が晴れていくように、もくもくと湧きあがっていた煙が段々消えて行くと ——

“ 煉獄 ” の強烈な一撃によってすっかり黒焦げになった大蛇が彼女の視界に入った。それはボロボロ………と大きな体を灰に変えながら、ゆっくりと風に流されて、形を無くしていっている。

流石は奥義と言われる所以の型だ。
血飛沫が付着した刀を一度振り、その奥義を放った人物は静かに日輪刀を鞘に納めた。



「杏寿郎さん」

「……どうした?」

七瀬が炎柱に駆け寄ると、彼は少しだけ肩を上下させて答えた。どうやら大きな怪我はなさそうで安心する継子だ。


「いつの間に不知火の連撃なんて…」


杏寿郎の右頬から少し血が出ていたのを確認した七瀬は、手ぬぐいを洋袴の衣嚢(いのう=ポケット)から取り出し、そっと拭いながら問いかける。


「ああ、すまんな。あれか?君が特別稽古で見せてくれた後から少しずつな。実際に日輪刀で使ったのは今日で二度目だが」


『二回目であの威力……。私は何回も実戦で使用してようやく形になったんだけどな。経験値が全然違うから仕方ないかあ』


「俺はそれよりも双頭の炎虎に驚いたぞ」

「…ありがとうございます。任務で一度試しにやってみたら、何とか出来たんです。だから実践でひたすら磨きました」


そうか、と笑った彼は彼女の頭をゆっくり撫でた。


「怪我はしてないか?……ん?左手を擦っているな」

「え?あ、本当ですね、夢中だったので全く気づきませんでした」


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