第19章 スサノオ・アマテラス・ツクヨミと大蛇(おろち) ✴︎
七瀬と炭治郎は呼吸を整えながら、自分達を除いた四人が応戦している場所へ近づいて行く。
「水の呼吸・肆ノ型 」
空色の刀身に変化した彼女の日輪刀からザア……と波が打ちつけるような水の流れが出現した。
「—— 打ち潮」
二つの波がうねるような連撃だ。これをまず大蛇に放つと、炭治郎が続け様に七瀬の後方から型を出した。
「水の呼吸・捌ノ型」
「——— 滝壺!!」
彼が地を蹴り、大蛇の上から日輪刀を振り下ろすと、滝のような水流が蛇の体を叩きつける。
二つの連続した水の呼吸の型に、四つの内二つの大蛇の頭がのたうち周り、炭治郎も酒が入った水筒を投げつけると、酔いが回ったのか。更に動きが弱くなった。
『よし———』
次に七瀬がする事。まずは水から炎に呼吸を切り替え、再び大蛇に近づいていく。そして彼女は杏寿郎をちらりと見る。
『やっぱりあの型か……』
自分が放つわけではないと言うのに、七瀬は心臓の鼓動が少し速くなっていた。
『私はこれに集中しよう! 』
「全集中! 炎の呼吸・弐ノ型」
炎の継子の刀身が、空色から茜色に変化する。
「—— 昇り炎天」
それは暗い境内に現れる、明るい炎の円輪。本当にこの型は”太陽”だ。七瀬は改めて実感した。彼女の炎刀から放たれた弐ノ型は大蛇達の頭をスパン、と斬りつけた。
「伊之助!善逸!お酒を大蛇に投げて!!」
「おう! 任せとけ! 」
「本当に日本神話だね…」
二人が酒を大蛇に投げつけると、最後に残っていた双頭の蛇の動きも途端に鈍くなる。そして花がしおれるように、その頭が地面に下がっていった。
そこへ ———
「炎の呼吸・奥義!! 」
『まさか任務で見れるなんて……』
稽古でもその迫力たるや度肝を抜かれた七瀬だが、放たれるであろう型の威力を知る彼女は、急いで大蛇の近くから離れた。