第19章 スサノオ・アマテラス・ツクヨミと大蛇(おろち) ✴︎
「焔(ほむら)だ。炎柱、すっげー癪にさわるんだが、お前と同じで俺も炎を操る」
「ほう! また奇遇だな。俺も更に不愉快になったぞ!」
杏寿郎の目の前 —— 十メートル先に立っているこの蛇鬼の姿形は十代半ばの少年のようで、身長百六十五を少し過ぎたあたりだ。
百八十センチ近くある炎柱より小柄である。
茜色の短髪に瞳の色は韓紅(からくれない)
素肌の上に着ている羽織は瞳と同じ韓紅で、下にはいている膝丈までの袴は黒一色。
足元は裸足。長い尾の先には蛇の頭、そして……左頬には茜色の蛇の痣。先程七瀬が対峙した蛇鬼とは、見た目も術の特性も真逆の鬼だ。
「血鬼術 —— 」
『む……!』
“鬼火の流星”
焔は自分の掌から狐火を縦に三つ程出し、それをそのままグッと押し出した。すると三つの炎は鞠と同じ大きさになり、ゴウッと放射状に広がる。
「炎の呼吸・肆ノ型」
杏寿郎が日輪刀をぐるっと振るうと、彼の眼前には巨大な炎の壁が広がった。盛炎のうねりである。
「へー、炎を壁のようにして塞げんのかあ 」
「そう言う目的でも使用出来る型でな! 」
ニタリと下卑た笑いを口元に浮かべた焔。
炎の柱に接近すべくグッと右足を踏み込んだ蛇鬼は、先程と同じ狐火を今度は両掌に浮かべながら、杏寿郎に向かっていく。
「血鬼術 —— 」
「炎弾の乱れ(えんだんのみだれ)」
ボボっと焔の掌から複数の狐火が素早く放たれ、杏寿郎を後方から取り囲むように軌道を描いた。
「壱ノ型 —— 」
たった一振りの横一閃。その炎の太刀の威力は凄まじく、彼を囲む前に焔の狐火は、不知火によって消失させられた。
『むかつくけど、この男の実力は確かだな……よし、これを試してみるか』