第19章 スサノオ・アマテラス・ツクヨミと大蛇(おろち) ✴︎
煉獄家に数年振りに訪れた家族団欒。昨日の朝食時までは考えられない光景だった。それを増長するかのように、元気な声が響く。
「おい、だご汁のおかわりくれ!!」
「わあ……さつまいもが俺のお椀にもたくさん入ってる!」
「なあ七瀬、うちでもこれ食べたいから作り方教えてくれ!」
声の主は伊之助、善逸、炭治郎だ。
後輩三人の楽しいやりとりも混じって、いつもより何倍も楽しい食卓風景だ。
『後で瑠火さんに報告しておこう……』
七瀬は残っていただご汁をずずっと飲み干すと、出涸らしになりかけている茶葉を入れ替える為、台所に向かう。
そして金曜日の夜。時間は十九時三十分…煉獄邸の仏間に彼女はいた。
『必ず戻ってきます、行って来ます』
七瀬は仏壇に今朝の報告をした後、いつもの挨拶をして立ち上がる。それから自分の部屋へと日輪刀を取りに戻った。
玄関では隊服姿の杏寿郎が、草履を履いて七瀬を待っていた。彼女の目には、炎柱の羽織がいつも以上に逞しく見える。
七瀬は草履を履いて立ち上がると、群青色の鞘をベルトの左側にさしこんだ。
そして着用している八雲の羽織を胸の前でギュッと掴む。
これは彼女にとって、験担ぎのような物だ。千寿郎が二人に向けて切り火を切る。
「兄上、七瀬さん。お気をつけて」
「……武運を願っている」
二人は千寿郎と槇寿郎に礼を伝え、玄関の扉を開いて外に出た。
『………どうしようかな。言ってみようかなあ』
門扉までの途中、彼女はもじもじとしながら歩いていた。
しかし意を決して、自分の少し先に見える大きな背中に声をかける。すると、杏寿郎が振り向いた。
「どうした? 七瀬」