第18章 始まりは日であり、炎は派生である 〜元炎柱・煉獄槇寿郎〜
「君には本当に驚かされてばかりだ」
俺は改めて感心していた。今は布団の中に二人で入り、向き合っている状態だ。
「ありがとうございます。槇寿郎さんの所に毎日のように通った甲斐がありましたよ」
そうだな、君の粘り勝ちだ。それにしても、だ。
「父上がまた千寿郎に稽古をつける日々が来ようとは……まだ信じられないぞ。君は新しい風をどれだけ煉獄家に吹かせてくれるのか…これからも楽しみだな!」
「ふふっ、新しい風ですか。良い表現ですね」
「そうか?」
「はい!……あ、それで杏寿郎さん。さっき言えなかった事があるんです」
……何だろう。続きを促してみると、これもまた予想外の返答が彼女の口から紡がれ、再び俺は驚いてしまう。
「はは! あの父を平手打ちしたか!君は本当に面白いな」
俺が笑い飛ばすと、なぜか彼女は眉を八の字に曲げて大きなため息をつく。理由を問うてみればやりすぎて今更ながら落ち込んでいるのだと言う。
「槇寿郎さんも最初どんな立場でこんな事をするんだ……って激昂しましたもん。でも私は杏寿郎さんを罵倒された事が、どうしても許せなかったんです」
そうか、君は俺を思ってそのような行動に出てくれたのだな。
柱になった時に”くだらない” と言った父を思い出す。
あの時もきっと ——父上は七瀬に見せた顔と同じ表情をしていたのだろう。
「俺は君の思いがとても嬉しかったぞ? しかしどうしても納得がいかないのであれば、師範として父に謝罪をしよう」
「え、そんな! 悪いですよ。私がやった事なので明日自分で槇寿郎さんに謝罪します……」
「俺がやる」「私がやる」の押し問答を数回繰り返した結果、二人で頭を下げよう。そんな結論に落ち着いた。