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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第18章 始まりは日であり、炎は派生である 〜元炎柱・煉獄槇寿郎〜




「さあ、もう戻りなさい。これ以上遅くなると二人に怪しまれるぞ」

酒瓶を彼女に掴ませ、そのまま両手首を持って立たせる。

筋肉はしっかりついているが、自分と比べると細い手だ。これで重い日輪刀を振るっているとは…。
掌もきっと剣だこや肉刺(まめ)だらけなのだろう。


「杏寿郎さんとここも一緒なんですね。掌もそっくりです」

「……そうか?」

「はい、そうです。それからお酒ありがとうございます!必ず鬼を倒して来ます……」

彼女が俺にぺこりと頭を下げる。


「千寿郎に伝えてくれるか?明日から再度稽古をつける、と」
「……はい!凄く喜ぶと思いますよ」


そうなのだろうか。
こんなに閉じこもった期間が長い親の事など見限ってしまう物ではないのか……。


「杏寿郎には継子を大事にするようにと。それから……炎柱としての責務に今まで以上に励めと。そう伝えてくれ」

「はい……!」


「明日から食事はここに持って来なくて良い。俺も一緒に食べる」

「わかりました。でもそれでしたら、きょ…師範には直接伝えた方が良いのではないかと」

「確かにそうだな。では千寿郎にだけ、伝言を頼む」
「はい」


先程と今のやりとりではっきりした。やはりこの娘は息子の思い人なのだな。


「七瀬さん」
「えっ、はい……」

初めてこの子の名前を呼んだ。彼女も驚いているが、口に出した自分にも驚いてしまう。


「杏寿郎を支えてあげてくれ。継子としてはもちろん……恋人としても」

「………!ご存知でしたか…」

「これでも元柱だぞ、君は気づいていなかったようだが、杏寿郎の事を名前で呼んでいた。それから俺の掌の感覚があいつと似ているとも言っていただろう。親しい存在でないとそう言った細かな事はわからない」

「言われてみれば…確かに……」


恥ずかしそうに笑った彼女は、それから何度も頭を下げて俺の元から去っていく。

廊下に置かれた朝食は冷めてしまっただろうか。それが少し残念だが、今朝の盆にもあの汁物が乗っている。
明日これの名前を教えてもらおう。

盆を両手に持ち、俺はほんのりとあたたかくなった体で冷めてしまった朝食を食べ始めた。








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