第18章 始まりは日であり、炎は派生である 〜元炎柱・煉獄槇寿郎〜
「……日の呼吸が誰でも使えていたとしたら、とっくに鬼のいない世になっていたかもしれません。それが出来なかった。私はここに何か意味があるのではないかと思います。日の呼吸を使っていた剣士の方も誰もが使えるものではない、それをわかっていたんじゃないでしょうか」
使えなかった意味、か。自分が考えもしなかった事を言われた俺はそのまま彼女の話に耳を傾ける。
「それでも同じ時代に存在している剣士の皆さんに教えて下さった。結果、五つに分かれて水、炎、雷、風、岩の呼吸が確立して……更にそこから派生して、花、蛇、蟲、恋、霞、獣、音。七つの呼吸が生まれました」
沢渡七瀬はそこで一つ深呼吸をした。
炎の呼吸を使用していた先祖に痣が出なかった事にも、きっと何かの意味があるのだ。
でもそれが何かと言うのは、残念ながら自分にはわからない。こうも言い放った。
「先程痣を出した者は一定の年齢を迎えるまでに、殆ど亡くなってしまう。そうもおっしゃいましたよね」
「そうだ、爆発的に身体機能が上昇する代償として、出現させた者はその分だけ命を削られてしまう」
炎の呼吸を使用していた先祖に痣が出現しなかったのは、出る必要がなかったからではないか。
そんな事を女は俺に訴えて来るのだ。
「出る必要がない?? 俺が先祖ならば、それ以上強くならなくてもいいと捉えるぞ! どんなに努力をしてもたどり着けない。皆(みな)が出来ている事が自分だけ出来ない。炎の呼吸は所詮、日の呼吸の模倣!! 手本に模倣が勝てるわけがない!! 俺も杏寿郎も君も!! くだらんのだ!! だから継子など………」
——— パァン !!
乾いた音と俺の左頬にじんじんとした痛みが走る。熱を少し持ち始めたそこに触れると、怒りがまたふつふつと沸いて来る。
「おい!! お前はどんな立場かわかってこんな事を……」
「私の事は!! 罵倒されようが、何を思われようが…構いません。でも師範を……そんな風に言うのだけはやめて下さい」