第18章 始まりは日であり、炎は派生である 〜元炎柱・煉獄槇寿郎〜
「しかし、炎の呼吸を使用する剣士 —— 我が家の先祖だな。彼は何故だかわからないが、痣が出現する事はなかった」
「え、どうしてですか?」
「さあな、それは不明だ……しかしこれだけはわかる。周りに出来る事がどうして自分だけ出来ないのか。さぞかし落ち込んだ事だろう」
「………」
娘は口を閉ざした。
それから彼 ——— 当時の炎柱はそれでも悪鬼を滅殺し続け、その天寿を全うするまで人生を鬼殺に捧げたと言う。
「三百年以上続いている我が煉獄家は、代々炎の呼吸を受け継ぎ、炎柱の雅号(がごう)も繋いで来た家系だ。これは君も知っているだろう?」
「はい、継子になってすぐに師範から教えて貰いました」
「俺の父も炎柱を務めていてな。父の姿勢を幼少時から見ている内に自分も柱へなる、と自然と目標が定まったんだ」
努力を重ねに重ねて、ようやく柱になった時は嬉しかった。父に報告した際は彼も一緒になって涙を流しながら喜んでくれた。
しかし —— それを見届けると、父は亡くなる。
「槇寿郎が柱になるまでは何としても生きる!! 」
日に日に病で弱っていく体に鞭を打ち、母に強い気持ちを訴えていたとの事だ。
それから瑠火と出会い、彼女と夫婦になり、二人の子供を授かった。子供達と瑠火、四人で過ごす日々はとても充実していた。
任務がない日は子供達に剣術の指導をしたり、隠に子供達を預け、瑠火と埼玉の川越へ遠出した事も数回ある。
細やかだが、穏やかな幸せ。
それがずっとずっと続いていく物と思った矢先、妻が病にかかり、やがて俺の前から忽然と姿を消した。
彼女が亡くなった時期と同じ頃、炎柱の書に書かれている内容を知った。
日の呼吸———
それは「始まりの呼吸」とも言われている。全ての全集中の呼吸の源流。
その”日の呼吸”について書かれている「歴代炎柱の書」を読んだ俺は、希望と言う光の大半を暗い底なし沼に吸い込まれてしまった。