第18章 始まりは日であり、炎は派生である 〜元炎柱・煉獄槇寿郎〜
「型は、どこまで取得した?」
「一応判明している型は全て、です。壱ノ型は改を自分で編み出しました」
「ほう」
意外だった。
代々続いている炎の呼吸に応用技を使用していた者はいなかったし、無論編み出したと言う者も皆無のはず。
それを目の前のこの女は……切り開いたと言うのか。
心に黒いモヤがポツッと点のように表出し、それはやがて歪な形となって胸中に張り付いていく。
一瞬驚いた顔がまた険しくなるのが自分でもわかる。
「悪い事は言わない。今すぐ継子はやめなさい」
「え、どうしてですか?」
何故抵抗する。
何故聞き入れない。
……歪なモヤに拍車がかかるように、嫌悪感までもが自分の全身に行き渡る。そして彼女に視線を合わすようにしゃがみ、ぎろりと睨みつけてやった。
「炎柱の書は見たのか?」
「はい」
「君はあれを見ても、何も思わなかったのか」
「どう言う事でしょう……」
はっとした。そうか、自分が引き裂いた頁をこの女が見ているわけはないのだ。ならば……伝えてやるとしよう。
炎柱の書に書かれていた真実を ———
「炎の呼吸は基本の五大呼吸だが、その始まりになった祖と言う物がある」
「日の呼吸、でしたっけ」
「そうだ」
それは「始まりの呼吸」とも言われている、全ての全集中の呼吸の源流だ。
炎柱の書によると、日の呼吸は最大にして最強の剣技。
故にそこから枝分かれした五つの呼吸……岩・雷・風・水・炎は単なる派生でしかないのだと言う。
「日の呼吸を使う剣士には額に鬼の紋様のような痣があったそうだ。剣士は当時の柱達に自分の剣技を指導したが、彼と同じ呼吸を放てた剣士は一人としていなかったらしい。だから皆(みな)は工夫して自分達のやりやすいように呼吸を変化させていった」
その内に一人また一人と、日の呼吸を使う剣士のように体のどこかに痣が出る者が増えていく。驚くべき事に痣を出した剣士は今までよりも段違いに身体機能が上昇し、鬼を討伐出来る確率も上がったのだそうだ。