第18章 始まりは日であり、炎は派生である 〜元炎柱・煉獄槇寿郎〜
「千寿郎くんは日中の太陽の白日(はくじつ) ! 一年中陽だまりのように優しく照らしてくれる癒し」
彼女は弟に目線を合わせた。
すると千寿郎もまた、先程の自分と同じで笑顔を見せている。
なるほど、昼の太陽か。確かに穏やかな弟と重なる部分があるな。
「……槇寿郎さんは」
ここまで口に出した後、七瀬は一度言葉を切ってしまった。さて父はどの太陽に例えられるのか。
「夕日……でしょうか。柱を務めていらした時は、杏寿郎さんと同じで朝日のような方だったと思うのですが」
「………」
「………」
父上は夕日。しかし、以前は朝日であった。
その言葉が小さな棘のように、チクリとした痛みで胸を突く。
再び俺達三人に静かな時間が訪れてしまった。
「あの、あくまでも私から見たら……の話ですよ?」
夕日は夜に向けて沈むものだ。
それ故、父がこのまま沈んでしまうのか。七瀬が言葉を足してくれはしたが、きっと千寿郎も俺と同じ思いが脳内を支配しているのだろう。
「天照大御神って天岩戸からどうやって出て来たか、お二人はご存知ですか?」
俺と千寿郎を交互に見ながら、更に彼女が話を続けて行くが……自分はそこからの内容をよく覚えていない。
「神様達が集まって……舞を舞ったり、その舞をみて、岩の前で騒いだり……」
「うん」
自分が言葉を紡げないでいると、弟が代わりに答えていく。
「中にいる天照大御神がどうして自分がいないのに、外は楽しそうにやっているのか。そっと覗き見した時に、思兼神(おもいかねのかみ)が天照大御神の手を引いて…手力男命(たぢからをのみこと)が岩の扉を力強く開いて出て来た」
何と! そのような経緯でアマテラスオオミカミは外の世界へ引きずり出されたのか。
「千寿郎くん、完璧だね!本当に感心したよ」
ここで七瀬は弟に向けて拍手をした。
「うむ!流石は千寿郎だ!」
「いえ、そんな事は……でも兄上もありがとうございます……」