第18章 始まりは日であり、炎は派生である 〜元炎柱・煉獄槇寿郎〜
「そう!日本神話!」
七瀬が千寿郎の回答に感心をしている。
そうだ、日本神話だ! 俺は先程から疑問に思っていた事が解消し、モヤがかかっていた思考がすっきりとした。
「確か弟の須佐之男命(すさのおのみこと)が乱暴した事に怒って、閉じこもってしまうんですよね」
「古事記、読んだ事あるの?」
「はい!」
書物を読む事が好きな弟は、兄の自分から見てもひいき目なしに博識だ。しかし、須佐男の事については俺も…。
「七瀬の羽織の柄の八雲は…」
「はい」
彼女の双眸に ”もしかして? “と言う期待が込められているのがよくわかる。
「その須佐之男命が詠んだ和歌に出てくるのだったな?」
「よくご存知ですね、当たりです!お二人凄いです!」
よし、思った通りだ。
七瀬の反応に満足した俺は、千寿郎と顔を見合わせて笑いあった。
「千寿郎が、七瀬の羽織の柄は八雲だと教えてくれてな。和歌に出てくると言うのは自分で調べてみたのだが……何故いきなり日本神話なんだ?」
ここが先程から特に気になっていた部分だ。一体どのような理由なのか?
「あの、怒らないで聞いて下さいね?」
「そんな事しません」
「俺もだ」
そうして、彼女は話を始めてくれた。
五分後 —— 思いもよらない話を聞かされた俺と千寿郎は、互いに声を発する事が出来ないでいる。七瀬は今の父が天岩戸に閉じこもった天照大御神とよく似ているのだと言うのだ。
「………」
「………」
俺達三人の間に訪れるのは、珍しく静かな時間。
「驚きました」
「だな、そのように見えているとはな」
“ あれ? “ と目を見開きながら、七瀬はこちらの顔を交互に見る。そして話を続けていく。
「煉獄家の男性達は皆さん、太陽だと思うんです」
「ほう! 」
「へえ…太陽なんですか」
「杏寿郎さんは一日の始まりを力強く、暖かく照らしてくれる希望の朝日」
一日の始まりか! それは嬉しいな!
鬼殺隊にとって希望の象徴である陽光。それに例えて貰った俺は、自然と笑顔が出る。