第16章 晴れた霞に心炎嫉妬をする、の巻。
「じゃあ……」
「え?何でいきなり……」
二人の雰囲気が一瞬、変わった気がした。いかんな、これ以上気にしていると、今胸の中を占めている物が大きくなってしまう。
俺は自分の目の前に置いてある、さつまいもの甘露煮を食べ始めた。
「うまい! わっしょい!! うまい!!!」
「沢渡から聞いてはいたが、本当なんだな」
「どうした、冨岡! 何か言ったか?」
「いや、確かに力が沸いてくる……」
「よくわからんが、ありがとう!!」
大皿にのっている半分程の量を食べた所で、宇髄が肩にポンと右手を乗せて立ち上がった。
「落ち着いたみたいだから、俺戻るわ」
「すまん、手間をかけた! 」
「気にすんな」
友人は去り際に俺の背中を一度柔らかく叩き、向かい側に戻っていく。七瀬達の会話はまだ終わらないのだろうか。
少し長いのではないか?
せっかく落ち着いた気分が再びじわりじわりと崖下から競り上がってくるように、上昇して来る。
時透のあの真剣な顔………! 自分が今まで見た事がないそれにやや衝撃を受けてしまう。
七瀬はと言うと、戸惑いの表情を見せていた。これは一体どう言う事なのだろうか。
★
「すみません、戻りました。あ、さつまいもの甘露煮!杏寿郎さん、私も頂いて良いですか?」
「………」
「杏寿郎さん!」
「ああ、すまない」
トントンと肩を優しく叩かれ、ようやく自分が呼ばれた事に気づく。そして俺を呼んだ声の主を確認すると、やや困惑している七瀬がいた。
「あの、どうしたんですか?」
「時透と何を話していたんだ?」
「え?名前を教えて、それと」
「そうか」
彼女が言い終わる前に、話を切り上げる。それ以上聞きたくなかった為だ。