第15章 紫電・心炎の想い / 八雲の踏み込み・蟲の戯れ
「でも、これは最高の験担ぎです。簡単には負けないようにしますね……」
七瀬は体の中から温かい気持ちがふわっと湧いてくると同時に、気持ちも落ち着いて来る。
そこへ ——
「おーい、煉獄! 沢渡! 時間過ぎてっぞー! 早く戻ってこい!」
「む、戦の神がお呼びだな」
「ふふ、はい」
天元から声がかかり、二人は額をゆっくりと離していく。
「先に行ってくれ」と七瀬に声をかけた杏寿郎は、彼女の背中を後押しするように前へ押し出す。
笑顔になった七瀬は体も心も弾ませて道場に入った。
「おっ、良い顔になってんじゃねぇか」
戦の神は彼女が帰って来ると、送り出した時と同様にニヤニヤした顔を見せた。
『宇髄さんも本当、人の事をよく見ているよね』
七瀬は再度木刀を持ち、目の前に立つしのぶに向き合う。
「……すごく良い顔になってますね」
『そうだった! 彼女もよく人の事を観察する人だった』
柱はやはり洞察力に長けているなあ、と実感する七瀬である。
「これで最後です、お互い思い切り行きましょう?」
「はい!!」
「三本目、始めっ!!」
—— さて、蟲柱との試合の結果は………
★
「いたたた……」
三本目終了より三十分後、七瀬はしのぶに突かれた右肩へ氷嚢を当てていた。
「七瀬さん、本当に筋力が上がりましたね…」
しのぶもまた、七瀬が突いた左肩に氷嚢を当てている。
その時、襖がスッと開かれて一人の人物が入って来た。
「蟲柱様も七瀬ちゃんもお疲れさまでした〜。お二人凄かったですよ!」
「あ、氷嚢持って来て下さったんですね。ありがとうございます、助かります」
「ありがとうございます、須磨さん」