第15章 紫電・心炎の想い / 八雲の踏み込み・蟲の戯れ
「どうした、伊黒」
「お前の継子はもっと骨がある奴かと思っていたが、とんだ腑抜けだな」
左右色の違う瞳が杏寿郎をじろっと睨む。首に巻かれている白蛇の鏑丸も彼を睨んでいるようだ。
『相変わらず手厳しい男だ』
杏寿郎は苦笑いしながら「緊張しているからな!」と助け舟を出した。が、ますます小芭内の双眸に力が入っていくのが確認出来る。
「お前との特別稽古では負けたにしても、爪痕を残したのだろう?それがなんだ、あの体たらくは」
「そうだな! それは否定出来ない!」
「まさかこれで終わりではないだろう?」
小芭内は一旦、杏寿郎から視線を外し、奮闘している七瀬を見据える。
「伊黒、君はどう思う?」
「お前の継子の事など俺は知らん」
蛇柱がぴしゃりと言い切る様子を受け、炎柱は苦笑してしまった。
「ははは、そうか。では何故ここにいるのだ?」
「甘露寺がどうしても見たいと言うから来たまで。それ以上でもそれ以下でもない」
杏寿郎と小芭内。二人の会話の流れを聞いていた蜜璃が「きゃっ♡」と、いつものようにキュン! と音が鳴るかのような可愛らしい声を出す。
「うむ! 仲が良くて結構!」
「煉獄さん、ありがとうございます!」
『……七瀬! 必ず二本目を取れ!』
杏寿郎は右手をグッと握りこんで、二本目が始まるのを待つ。
「五分経ったぞ! 二本目開始だ —— 」
天元の声によって、再び勝負は始まった。
義勇の指摘通り、先制されて体の硬さが和らいだ七瀬は早速呼吸を整えた。すると、彼女の体温が上がっていく。
「炎の呼吸・壱ノ型 —— 改 」
「不知火・連!」
炎の継子は足と腰を思いきり落とし、右足をグッと強く踏み込んだ。