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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第14章 緋(あけ)と茜を繋ぐ下弦の月 ✴︎



俺と七瀬の年の差は三つだ。
自分は二十歳、彼女は十七歳。そんな成人の一歩手前の年齢の恋人は妹でもあり、姉でもある。
これは比喩ではなく、実際の家族構成の事だ。

七瀬には兄君、そして妹君がいたらしい。
それ故だからであろうか。先程自分の髪を結んで欲しい旨を伝えた際、任せて欲しいと告げた彼女はなかなか頼もしかった。


反対にこうして揶揄い(からかい)がいがある —— と言うのはいささか言葉が悪いな。言い換えるとしよう!
見た目はもちろん、そのかわいらしさ故につい構いたくなる性格。


相反する二つの顔を持ち合わせているのが、七瀬の魅力と言って良いだろう。

姉の顔、妹の顔。どちらも愛い事には変わりない!そんな事を胸の中で一人ごちていると声がかかった。


「あ。杏寿郎さん、唇」
「ん?唇か?ああ……」

ふと唇に感じた小さな小さな違和感。それを自分の親指で拭ってみれば、そこには曙色の紅が乗っていた。


「これで取れたか?」
「……はい」

にっこりと笑顔を見せる七瀬に胸の鼓動が心地よく跳ねる。


「急ごう、間に合わなくなる」

俺は改めて彼女に自分の掌を差し出すと、自然な動作で七瀬は掌を重ねてくれた。そして目的の場へと足を向けたのである。

















ゴーン……と、大きな鐘が鳴り響くこの場所は街中にある寺。
本日の目的の場所がここだ。七瀬の手には何ともおどろおどろしいお岩さんの絵が書かれているチラシがある。



落語を観にきた。寄席ではなく、寺に噺家達を招いてのそれだ。
怪談は苦手、と散々恋人に伝えられたのだが、どうしても彼女と行きたい思いがまさり「一緒に行くぞ」の一点張りで、ここまでやって来た。


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