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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第14章 緋(あけ)と茜を繋ぐ下弦の月 ✴︎



「ここもかわいいな」
「えっ……」

彩られた爪先を左手で指さすと、七瀬の顔に笑みが宿った。


「杏寿郎さんの髪や瞳の色と同じにしてみたんです……とは言っても、二色とも代替えですけどね」

「ん? どういう事だ?」

繋いだ手を自分の顔に近づけ、彼女の爪を色々な角度から見てみる。親指・中指・小指には浅緋(あさあけ)色が、人差し指・薬指には黄色が塗られているが……彼女の意図がどうにもわからない。

どちらの色も七瀬に似合っているとは思うが。


「真っ赤は大人の女性と言う感じで気が引けちゃいましたし、金色は見つからなかったので、黄色にしたんですよ」

「なるほど」

俺は一回頷くと、持ち上げていた自分達の手をそっと降ろした。
じわりじわりとあたたかな感情が胸中に広がっていく。

「嬉しいものだな」
「え?」

きょとんとした表情をしながら、こちらを見上げる七瀬だ。


「俺の事を思って、色々考えてくれている事が」
「それは好きな人の為には少しでも……」

「少しでも、なんだ?」

ぐっと顔を近づけ、覗き込むように恋人を見ると耳がやや赤かった。聞かせてほしい、君の気持ちを。


「綺麗でいたいなあ、かわいくありたいなあって…思いますから」

そう発した後、彼女の耳が更に赤く色づいた。いかんな、愛いすぎるではないか。


「…七瀬」
「はい」
「ありがとう。本当に嬉しい」
「いえ」


そこで一旦会話が途切れた。しかしこの沈黙も心地良かった。今一度絡めている手を繋ぎ直すと、改めて気づく。
彼女の手は本当に小さい。守ってやらねばなあと思う。

しかし、七瀬は俺と同じ鬼殺の剣士だ。自分で自分を守る事など造作もないだろう。
それでも ——


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