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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第14章 緋(あけ)と茜を繋ぐ下弦の月 ✴︎




十分後、俺の髪は頭の上で一つに結い上げられていた。

久かたぶりにこの髪型にしたせいか、うなじが涼しい。
鏡を見ながら、自分はやはり千寿郎と似ているなとしみじみと実感していた。

「やっぱりこうすると、千寿郎くんによく似てますねぇ……何がおかしいんですか?」

「いや、すまん。俺も丁度同じ事を考えていてな」

くつくつと笑っていたら、七瀬が眉を顰めて首を傾げていた。そんな彼女が愛らしくなり、俺は七瀬の右頬に口付けを贈る。白粉の香りがふわりと鼻腔に届いた。

自分の為にやってくれたのだろうか。そんな自惚れめいた感情が胸を通り抜ける。


「杏寿郎さん! いきなりそう言う事するとびっくりします」

「ああ、すまない。普段君が化粧をしている姿をみる事がない故に新鮮でな」

「だって……今日は…」

ぶつぶつと細切れのように言葉を発する七瀬が愛い!
俺は困ったように自分を見ている彼女の右頬に、もう一度口付けを贈った。













その後、七瀬と街へ出てきた。

「うむ! 今日も賑わっているな!」
「はい、そうですね」

「ん? どうした」

恋人が先程から自分をチラリチラリと気にしている。何かおかしな所でもあるのだろうか?疑問に思った俺は七瀬に問いかけてみる。

すると ———


「よくお似合いなので、見惚れていました」

はにかみながらもはっきりと伝えてくる彼女が、何ともかわいらしい。君も似合っていると言うと、更に破顔する七瀬だ。

そんな恋人の左手に自分の右手を絡める。小さいが、掌は俺と同じように分厚く固い。
先程、自宅でチラリと見えた彼女の爪先を改めて確認する。二色の色が交互に塗られているようだが……。

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