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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第14章 緋(あけ)と茜を繋ぐ下弦の月 ✴︎



「君は橙色か? 珍しいな。このような色も持っていたとは」

彼女が普段隊服の上に着用している羽織は、青柳色(あおやぎいろ)で寒色系だ。桐谷くんの墓参りで会った時も同じ寒色系の青紫色を着ていた。

故に七瀬と言えば、寒色系。
そんな印象が自分の中にあったのだが……。

「先日自分の衣服を見直したら、全部寒色系で何だか笑えて来て。青が好きとは言え、流石にこれは多すぎかなあと。だから呉服屋に目聞きの友人と一緒に行って仕立てたんです」

「ほう、そうだったか」

「初めて袖を通したから落ち着かない」 —— そんな事も続けて発言する彼女だが、俺はよく似合っているなと感心をしていた。

よくよく見ると、薄づきだが化粧を施しているな。む、両手の爪にも色が乗っているではないか。


「杏寿郎さん! 用事があったんじゃないですか?」
「そうであった! 実はな…」


つい彼女を観察していると、それを振り払われるように声をかけられた。残念だ、もう少し見ていたかったのだが。
気持ちを切り替え、この部屋に来た理由を告げると、恋人はとても嬉しそうに笑った。


「任せて下さい。妹の髪をよく結んでいたので慣れています」
「そうか、では頼む」
「どうぞ、ここに座って下さい」

いつも彼女が使用している座布団の上に座る。
文机の上には手鏡が置かれており、手に持って欲しいと言われたので、俺はその通りにする。

「いつも一部分だけ結ぶから問題ないと思ったんだが、全てとなると案外難しくてな」

「杏寿郎さんの髪、結構量がありますからね。髪質もふわふわしてるし、難しいかも。じゃあまず櫛でとかしますね。まとめやすくする為に香油も少しつけて良いですか?」

「うむ、問題ない!」


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