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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第14章 緋(あけ)と茜を繋ぐ下弦の月 ✴︎



「んっ……!何だろう、これ。一度も食べた事がない味だ!でも俺の味覚に凄く合うよ。人間の女は甘味を好むらしいけど、それってこんな感じなのかな」

「ではもう一ついかがですか?」

「へえ、案外気がきくんだね。それじゃあ遠慮なく」


グチュっと夕葉の左目が、童磨の鋭い爪によってくり抜かれた。
右目も左目も空洞になったそこからは、真っ赤な鮮血が涙を流すようにポタリポタリと、夕葉の着流しを再び赤く染めていく。


「美味しい!女の肉にも負けない口当たりだね。なあ夕葉、俺と取引しようぜ。とっておきの案が浮かんだんだ」

「取引?」

「うん、そう。君にとっても悪くない話だと思うよ」

童磨が今しがた甘味のように食した夕葉の瞳だが、本人のくりぬかれたそこはもう半分程再生をしていた。
その様子を見た童磨はまた嬉しそうに微笑み、夕葉に己の瞳を差し出すよう指示をする。






「女で一番美味い所は心臓だろう?俺も君と同じで、そこを食すのが本当に好きなんだ。心臓一つにつきその茜色の目を一つこれからも俺にくれたら、今回は水に流してあげるよ。これまで通り心臓を喰っても良いから……って事で契約しよう!はい、これお食べよ」

「………!」


夕葉は驚愕した。

童磨が自身の左目をくり抜き、ポンと彼の掌に乗せたからだ。
虹色に輝く瞳の中央には “上弦” の二文字が刻まれている。いつかは自分もこの位へ。


その目指すべき二文字に、彼は吸い寄せられるように。
躊躇なく己の口へと入れた。
瞬間、身体中が満たされていく。

舌で丹念に転がし、牙でプスっと噛む。
すると口腔内に広がるのは、いつも女達の心臓を食べた時の高揚感だった。
心臓がドクドクと脈打ち、体内の血液がわなないていく。

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