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沈まぬ緋色、昇りゆく茜色 / 鬼滅の刃

第14章 緋(あけ)と茜を繋ぐ下弦の月 ✴︎



しん、と静寂が通り抜けた次の瞬間 ——

「人間は嘘をたくさんつくと死んだ後にね、舌を抜かれるんだって」

「………!!」

音もなく夕葉の前まで移動した童磨は、彼の口に右手の鋭い爪をブスっと突き刺した。

「もらうよー?」
「うっ、」

ぶちん、と肉が裂けた音が部屋を包んだ。すると夕葉の群青色の着流しがぽたりぽたりと、赤に染まっていく。

「うわあ、君って顔だけじゃなくて舌も綺麗なんだねぇ。うん、聞いた通り味もなかなか。共喰いは俺の趣味に合わないなあって思ってたけど、流石は無惨様のお気に入りだ」

童磨は爪先に刺さった夕葉の舌をチロリと一度舐める。
すると満足そうに口を開け、桃色の肉の塊を全て口腔内に入れた。


「うん、うん。凄く美味しかった!ありがとう!」
「それは…何よりです」

童磨はおや、と目の前の鬼を見て頸を傾げた。頭に浮かんだ疑問を早速夕葉に問うてみる。


「あれ?夕葉、再生速度上がってるね。もう話せるんだ!やっぱりこれって、無惨様の血を定期的に与えられているからかな?」

「………」

ニタリとした笑みを浮かべながら、上弦の弍は下弦の壱にグッと顔を近づける。見目が大層良い童磨だが、自分とはやや雰囲気が違う夕葉の整った顔を改めて見つめる。

『女だけじゃなく、男も魅了すると言った所か。なるほど、無惨様が夢中になるわけだ』


うん、と一つ頷いた童磨はこんな提案をした。

「君のここを俺にくれよ」
「………」

トン、トン、と童磨の長い指が夕葉の右目尻を柔らかくつついたのち、眼球周りをぐるっと一度辿る。

柔らかい雰囲気だが、上弦の鬼の申し出は断れない。
それをよく実感している夕葉は「わかりました」と了承し、己の右目に手をかけた。


グチュっと彼の右目がくり抜かれると、夕葉の目の前にいる鬼は嬉しそうに虹色の双眸を細める。
そして茜色の眼球を受け取り、少し持ち上げて観察した後はパクリと口の中に放り込んだ。


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