第13章 浅緋(あさあけ)、君に口づける ✳︎✳︎
杏寿郎さんの唇がまた私の唇を優しくさらう。
それを合図のようにして、自然と彼の首に両腕を回した。
ち、ち、ちう……と啄むような口付けを繰り返していけば、左頬にあった掌がそのまま顎、鎖骨…と滑っていき、その下にある膨らみをゆっくりと揉みしだく。
「あん……もう朝だから、そこはちょっと」
「ここは嫌そうではないが」
私は右手で彼の手首をやんわりと掴んだ。
でも杏寿郎さんは手首を掴まれた事は全く気にせず、今度は2つの指で先端の尖りを優しく摘んで来る。
「ん……」
体がビクッと反応した。更に彼の指が乳輪ををこすり合わす。下の蜜壺がドクン!……と強く強く、脈打った。
「んぅ、きもち………いや、ダメです!」
蕩けそうになる思考に何とか待ったをかけ、また少し彼の手首を掴む手に力を入れた。
「……ダメなのか?」
珍しくそんな事を言う恋人にドキッとしたけど、グッと力を入れて自分の体を起こす。
—— すると。
まだ薄暗い早朝だけど、昨夜ぼんやりとしか見えなかった彼の体がはっきり見えた。刻まれたたくさんの傷は、それだけ杏寿郎さんが自分の命を懸けて戦った証拠だ。
先程「ダメ」と言ったものの、愛おしい気持ちが急に駆け上がって来てしまい、私は彼に吸い寄せられるように抱きついてしまった。
「どうした?ダメではなかったのか?」
頭の上からフッと笑う声がすると、私の髪がゆっくりと彼の指で梳かされる。
「ダメだったんですけど……まだ朝も早いですし……その……」
“もう一回”
そう思い切って言おうとすると、自分の視界が急に反転した。先程と同じように、杏寿郎さんが私の上に跨る。
「俺は本当にやめようと思ったんだが、君がそのつもりなら……遠慮なくもらうぞ」
三度(みたび)彼の唇が、上から降って来た。
啄むような口付けがひと段落すると、舌をスルッと差し込まれる。
歯列も丁寧になぞられ、心地よくなった私は自分の舌を彼の舌に絡ませていき、腕を先程と同じように首に回す。