第17章 鼠姫
「よいしょっと!」
伝統により花嫁を迎え入れる時は花婿が「横抱き」にして御殿に入る。
「案外重いな。」
「もうっ!衣裳と簪が重いのよっ。」
造りたてでまだ木の香りがする部屋には、お祝いの花や贈り物がところ狭しと並べられていた。
「嬉しいな。」
その中にひときわ豪華な花と大きな贈り物の箱が積まれていた。
「うわっ、これスゴイな。何処からだ?」
「遊郭からだよ。」
「遊郭!?………「龍宮楼、乙比女」……
おい、乙比女といえば最近評判の「売れっ妓」じゃないか!千人に一人の名妓とか謳われて外国からもお客が来るっていう。」
「……随分と詳しいじゃない。さてはお通いになってますかな?」
「ちげえよっ!!従者が話してるのを聞いただけだっ!」
「ふぅ〜ん。」
「本当だって!俺はネズだけだ!」
ナンは相変わらずすぐムキになる。
「……ごめんごめん、ちょっとからかっただけ。
もしナンが遊郭に行ったとしたらすぐに沙良が知らせてくるもんねっ。」
「え?どうして沙良……まさか売られたのか!?」
「違う違う。沙良が自分で選んだのよ。
「乙比女」は沙良、沙良が「乙比女」なの。」
「ひぇ〜〜っ!」
「私も艶姫様から聞いた時はびっくりしたけど、いかにも沙良らしいじゃない?」