第17章 鼠姫
前庭の紅葉があでやかに色づいた正殿で婚礼の儀が行われた。
王族方の見守る中、二人揃って帝と皇后様に礼をして私たちは晴れて夫婦(めおと)となった。
伝統の花嫁衣裳を纏った私を見て燦姫様は目を細めた。
「ドブネズミだった娘が今や皇妃様だよ。この変わり身ったら。」
五王様―――いや今は一王様が訊く。
「ところで名前は「鼠」のままでいいのか?」
「………皇妃が、ましてや第一妃が「鼠」はさすがにマズいでしょって言ったんだけど、本人が気に入ってるからこのままでいいってさ。」
(鼠………ネズ)
最初呼ばれた時は戸惑ったけど、今となっては他の名前で呼ばれることは考えられない。
「「姉上」に似て頑固な姫様たからな。」
一王様は嬉しそうに婚礼の盃をグイと煽った。