• テキストサイズ

燦姫婢女回顧【R18】

第17章 鼠姫


「さっそく尻に敷かれているな。」


一王様と燦姫様が様子伺い―――――
いや改めてお祝いに御殿へいらしてくれた。


「おめでとう、二人共。」



「燦ねえも!おめでとう!」

「輿入れも三回目ともなると、おめでたくも何ともないよ!」



燦姫様は先日何と一王様に輿入れして三妃様となっていた。

「こっちはさっさと湖水亭に引きこもって隠居したかったんだけど、一王様(このヒト)がどうしてもって言うもんだからさ。」


ナンと私は分からない様に目配せする。
本当は燦姫様が「私とナンが心配だから後宮に残る手はないか」と一王様に掛け合ったらしい。

「何度でも婚礼はお目出度いものですよ。」

「奥方様になった途端、ずい分と言う様になったねえ〜」

「うふふ、私も嬉しいんです。姉上とお呼びしていいんですよね。」

「………!生意気な妹だよ!」

燦姫姉様はプイと顔をそむけた。


「あれは相当嬉しい時の態度だね。」
ナンが耳打ちした。


「ナン、聞こえてるよっ!

さーあ、新婚さんの初夜にお邪魔したね。
行くわよ、旦那様。」

「そうだな、長居は野暮だな。
――――また来る鼠姫。」


お二人の背中を見送った後、私たちは顔を見合わせた。

「聞いたか?」

「聞いた!『旦那様』だって!」


ひとしきり笑った後、シンと静まりかえる部屋の中。
庭の金木犀だけが饒舌に薫っている。

「急に寂しくなっちゃったね、一王様たち、ゆっくりしていけば良かったのに。」

「俺たちに気を遣ってくれたんだろ。」

「別に今夜が初夜ってワケでもないのにね。」

「………!本当にケロッと大胆なこと言うからなあ!俺の奥方は。」

「奥方!?」

初めてそう呼ばれて恥ずかしくなる。


「なーに変なとこで照れてるんだよっ。

………夏至の時はあくまでも『女王』と『太陽王』の初夜であります!」

「そ、そうだねっ!

……あらためまして、よろしくおねがいします。旦那様。」

「よろしくな。鼠姫。
……でも呼ぶのは今までどおり「ナン」でいいよ。」

「あ〜恥ずかしいんだ〜〜」

「そうじゃねえよっ!」

また耳まで真っ赤な顔をしているナン。
何も変わっていない。

「ふふっ、私も「ネズ」でいいよ。ずっと。」






/ 99ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp