第17章 鼠姫
「夏至祭」を終えて間もなく、帝が崩御された。
現一王様が新帝に即位され、新しい世が始まった。
賢明で思慮深い新帝は、新王政を血筋や跡継ぎの有無にかかわらず、資質や人望でお決めになり―――――
五王様が新一王様となられた。
城の裏の湖の反対岸に「湖水亭」と名付けられた御殿が新築され、ご隠居される現王様方とそのお妃方が入られることとなった。
二王様はお年の為、四王様はまだお若いが、芸術や文学に秀でていらしたのでその研究の為に国政から退きたいとお申し入れがあった。
六王様は後宮での「薬湯事件」のこともあり、愛妃と静かに暮らしたいとのお申入れもあったが、留学もして磨いたその知性で国政に貢献して欲しいという新一王様の熱意に負け、輝姫様とお生まれになったばかりの皇子様を携えて「新二王様」となった。
そして「新三王様」には我らがナン!
新四王様、五王様には現四王様の皇子様お二人が就いた。
新三王様、ナンの御殿はとっくに完成していたが、妃の輿入れだけがまだだった。
婢女が妃になるなど前代未聞だが、夏至祭で結ばれた私たち。
誰もが夫婦(めおと)になるのが当然と考えていた。
最終的に輿入れを許すのは新一王様、先の五王様だ。
「――――その通りにするしかないだろう。私は賭けに負けたしな。」
「賭け?」
「忘れたのかナン、いや三王。鼠姫の「初めて」を奪う賭けをしていただろう?」
「………っ!あの賭け、まだ続いてたのかよ!?」
「えぇっ!そんな賭けしてたのっ!」
側でやり取りを聞いていた私は驚いた。
「………いろいろあって俺、すっかり忘れてた。」
燦姫様がパンパンと手を叩いた。
「兎に角決まりだわね、めでたいことめでたいこと!」