第16章 太陽王
「よお………」
「ナン!?
……どうして?!」
「へへっ。」
ナンはいたずらっ子の様に笑った。
「しっかしこれ重いなあー。」
重厚な金の冠と上衣を床に脱ぎ捨てて、私の横に腰掛ける。
「ネズがどうしても女王になるって言うから俺は太陽王になってやった!」
「はぁ?!」
「麗姫と三王の一件で一王様が褒美に何かやるって言ってたからさ、褒美代わりに『太陽王の役をさせてくれ』って頼んだ。
褒美は何でもいいってことだったからまあ駄目だとは言えないよな!」
「ナンったら……………あっ、きゃっ!」
薄緑色の下衣は透ける布で造られていて乳房が丸見えになっていることに気付いた私は慌てて両腕で胸を覆った。
後宮に来た頃よりもだいぶ乳房の膨らみは増していた。
ナンは笑った。
「………いまさらどうした?ついこの間まで素っ裸で歩いてたくせに。」
ケラケラ笑っていたナンだが急に真剣な顔になってグイと私を抱き寄せた。
はらはらと解ける両腕。
「……いいよね?」
真っ直ぐな目で見つめられる。
透き通った瞳に吸い込まれそうになりながら、私は頷いた。
翡翠の簪が引き抜かれた。
長い髪がサラリと肩に落ちる。
「……どうぞお好きに。太陽王様。」
枕元には小刀が用意してあった。
「髪は…………
このままでいい。
だってネズは全部俺のものだから。」
口唇が重なる。
今日は昼間が一番長い日だ。
まだ外は煌々と明るい。
「……化粧をしているネズ、初めて見た。」
やおら顔を離してナンが言う。
「変………かな?」
「ううん、綺麗だ。すごく綺麗。」
また口づけられる。今度は長い長い口づけ………
ナンの手が下衣の帯に伸びた。
「ん?何だ?これっ……解けないっ………」
不器用なナンらしい。
私はぷっと吹き出した。
「笑うなよっ!」
「ごめんごめん。ちょっと待って。」
私は枕元の小刀を手に取って、帯を切り裂いた。
「ついでに。」
ナンの下衣の帯の結び目にも刃を入れた。