第16章 太陽王
金糸銀糸を織り込んだ豪華な着物を着せられた私は巫女に手を引かれて廊下を進む。
銅鑼の音が鳴り響く庭に出ると、ワッという歓声に包まれた。
皆立ち上がって私を迎える。
五王様と燦姫様、ネコさんの姿もあった。
やはりナンは見当たらない。
(去年も来てなかったしね。)
私は何故だか気落ちした。
群衆の中を掻い潜る様に進む。
(あれ?)
庭の中心に据えられているはずの例の妙ちくりんな玉座がない。
巫女が導くまま、するすると庭を抜ける。
歓声が遠のいていく。
(………!。いったい何処へ?)
巫女に連れて来られたのは、城の裏手にある美しい湖の畔。
王族が夏に涼む為の「あずまや」がある。
今日は白い花々で飾られた「あずまや」。
周りに置かれたたくさんの行灯に照らされ、幻想的な雰囲気だ。
「今年はこちらで太陽王と交わっていただきます。」
(!?)
朱い絹の靴を脱いで「あずまや」に入る。
中には真新しい敷布の掛かった寝台に枕が二つ。爽やかな香が薫っていた。
巫女は私の背後に回って重たい着物を脱がせると、
「私共と祭祀役は外に控えております。」
そう言って一礼し「あずまや」を出ていった。
(一体どういうこと?今年はだいぶ趣向が違うけど……)
下衣だけにされた私はぽつんと寝台の上に座っていた。
湖面に夕陽が当たってキラキラしている。
―――――戸口に誰かが立っていることに気がついた。
(逆光で眩しくて見えな………)
金の冠が眩く輝いている。
シャラ………
その人物が歩み寄って来ると、衣に付けられている飾りが揺れて小さな音を立てた。
(この人が、太陽王………様なの?)
――――ようやくその人物の姿がはっきりと捉えられた。