第11章 床役
シャッ………!
乱暴に部屋の入口の薄布が取り払われ、どすどすと大きな足音を立てて「三王様」が入って来た。
(あたしの役目はここまでだ。)
礼をして奥に下がろうとすると………
ピシッ!
麗姫様がいつの間にか手にしていた細い棒、鞭?であたしの足元を打った。
「!?………」
「何処行くんだよ!ここにいるんだ!」
乱暴な口を利く麗姫様にはいつもの穏やかな表情は微塵もない。
三王様はどっかりと寝台に横たわり、果物鉢からリンゴを掴み取ってムシャムシャ食べていた。
「麗姫、もうこないだの娘、孕んだんだからいいだろう?かったるいんだよ。」
「だめ!前の娘みたく流れちゃうかもしれないじゃない!タマは多い方がいいわ!」
三王様はフンッと鼻を鳴らした。
(こないだの娘?孕む?流れる?………
一体どういうこと?)
思考が追いつかず呆然とするあたしの顎を麗姫様は鞭ですくい上げた。
「こないだの娘よりこの娘の方が好みでしょ?」
三王様はねっとりした視線をあたしに向けてきた。
「……そうだな、こないだの娘は太り過ぎだ。」
「でも太ってた方が孕みやすいっていうから試したら正解だったわね。」
(梅花のこと?!)
「脱げ。」
「えっ?」
三王様の一言にあたしは思わず聞き返した。
ピシッ!
すかさず口の端を麗姫様に鞭打たれた。
(……痛い!)
「おいおい麗姫、あまり傷をつけるな。萎えるじゃねえか。」
「ふんっ!傷があろうがなかろうが若くて未通女なら誰でもいいんだろ?
さっさと裸になるんだよ!このグズ!」
打たれたところの痛みと麗姫様のあまりの豹変ぶりに涙が溢れてきた。
もそもそと服を脱いだ。
恥ずかしいというより怖かった。
「めそめそ泣かれると興が冷めるなあ。」
三王様は食べ終わったリンゴの芯をポイと床に放った。
「踊りでも踊ってみせろ。」
(踊り………?)
ピシィ!!
今度は前を隠していた両手を叩かれた。
「教えてやっただろ?早く踊りなさいよ!」
鬼の様な形相で睨む麗姫様。
恐怖で震える手足をぎこちなく動かして教わった舞を始めた。
「……つまんねえな。もっと脚上げろ!」
「………姫様にはこの様に教わり…」
ビシ―――ッ
あたしが言い終わらないうちにまた口の端を打たれた。