第1章 波乱の予感
「次、入って!」
「はいっ!!」
天幕の中には低い椅子に座った老婆とその両脇に中年の女が二人。
「預かり状を。」
私は懐から名前と出身地、そして保護者であるおばあちゃんの署名の入った書状を中年の女の一人に渡した。
さっと目を通されると、
「下履きを脱いでここに座って。」
「えっ!?」
「聞こえたわよね?早くして。」
私は戸惑いながらも下着を取っておずおずと老婆の前に敷かれた筵の上に腰を下ろした。
「膝を立てて脚、開いて。」
「……………!」
グズグズしてたらもう一人の女が後ろに回って両膝を掴んだ。
「後がつかえてるから、早く!」
グイと拡げられ、私の誰にも見せたことのない部分が露わにされた。
すぐに老婆がしわがれた片方の指で私の襞を左右に開いた。もう片方の手に持った単眼鏡でナカを覗き込まれる。
「よし。」
老婆が告げると女が預かり状に何やら印を付け、私は開放された。
着衣を整えて天幕を出るとようやく後宮の門の中へ迎え入れられた。
先に天幕に入った沙良はさも余裕ありなんという顔で他の婢女志願者達と談笑していた。
私の姿を確認すると、
「終わった?あらあ?もしかして涙ぐんでる?」
私はハッと頬を拭った。
天幕での思いがけないことで自分で気がつかないほどに動揺していたらしい。
「このくらいでメソメソしてちゃダメよお。ここには皇子様や皇女様がいらっしゃるのよお。ヘンな病気持ち込まない為の大事な検査なのに。ねえ。」
と沙良はさっそく打ち解けた婢女仲間に同意を求める。
割とこの後すぐに知ったことだが、この「検査」は病気もだが「未通女(おぼこ)」であるかどうかを調べる事が第一の目的だった。
「これからここでどちらのお妃様にお仕えするか知らされるの。ああ、位の高い方だといいなあ。少なくともあんたよりはね。」
沙良は右の口角を吊り上げて笑った。
――――婢女候補が全員出揃ったところで、立派な着物と被り物をしたお役人さんが出て来た。一段高い所に上がってバサリと長い紙を広げた。
「いよいよ発表よ!」