第1章 波乱の予感
「ふう、何とか開門時間に間に合ったな。」
お役人さんは手ぬぐいで雨と汗を拭った。
お城に着いた時には雨も上がり薄陽が差していた。
お城と言っても私ら婢女は決して正面きっては入れない。
裏に廻り込んで別に据えられた「後宮の門」しか使えない。
「さ、入る前にここに並ぶんだ。」
沙良と私は門の前の白い天幕から伸びている列に並ばされた。
今日は全国から志願してきた婢女が一斉に後宮に入る日。その数は数十人ほどいる。
この国は筆頭の「帝(みかど)」を軸にそのご子息7人で治めている。
ご子息は上から「一王様」「二王様」………
と呼ばれており、それぞれお妃様が複数人。
一王様が10人、ニ王様で8人、三王様、四王様がそれぞれ5人で五王様はお若いからまだ2人、
六王様と七王様はお独り身だそうだ。
帝の20人のお妃様もまだ全員ご健在だから、お仕えする人間はそれなりの数が必要な訳だ。
少し待って天幕の中に呼ばれた。