第1章 波乱の予感
お役人さんが良く通る声で次々と婢女たちの配属先を読み上げていく。
最初の方で沙良が呼ばれた。
『………○○村、沙良、三王第ニの妃、麗姫様。』
「きゃあっ♡」
沙良は恥ずかしいほど大きな歓声を上げた。
「麗姫様はこの後宮で一二を争うお綺麗な方だって聞いたわ!何てツイてるの?!夢みたい。」
抜け目のない沙良は少しの間でいろいろと情報を仕入れていた様だ。
――――だいぶ後で私の名前も呼ばれた。
『……………ニ王第八の妃、燦姫様。』
あたりがざわついた。
(え?何?どうしたの?)
「あーららあ?また貧乏くじひいちゃって。
くすくすくす。
燦姫様んとこに行かされた娘はね、誰も3日ももたないんだってさ。どんだけキビシイのかしらねーえ?」
また沙良が口を歪めて笑っている。
「二王様は三王様の兄王だけどあたしは第二妃様んとこ、あんたは第八でびりっけつ!
どっちにしてもあたしの「勝ち」ね!」
いや、勝ちとか負けはどうでもよくて、何としても私はおばあちゃんの為にここで頑張らないといけないのだ。
(まあ〜沙良と離れられただけいいかな……)
やがて全員のが告げられると、各妃付の女官が奥から現れ、娘たちを引き上げて行く。
沙良も妃とも見れる衣も姿も美しい女官に連れられ御殿の中に吸い込まれて行った。
同じ妃に仕える婢女は沙良の他もう二人いて、その娘たちも沙良の様に可愛らしい顔をしていた。
いつまでたっても私の迎えは来なかった。
ぽつりぽつりと娘たちがいなくなり、遂に私一人が残された。
見かねたお役人さんが駆け寄ってきた。
「……お前は?ああ燦姫様んとこか。まいったな、あそこは女官がいなかったな。」
(えぇ?!どういうこと?)
その時、フッとあたりの空気が動いた………