第6章 夏至祭
幼子が「イヤイヤ」をする様に茅乃は頭を左右揺すっていたが、祭祀役の両手で押さえつけられ「吸口」がその口に充てがわれた。
茅乃は一瞬噎せたが、液体は容赦なく流し込まれて華奢な喉元がドクリと動いた。
その途端、茅乃は白目を剥いてクッタリとし、すべてのカラダの動きが止まった。
「眠り薬だな。」
「仕方ないわ。あれじゃ進まないもの。
あ、ほら見て!ネズみたいにツルツルにされるよ。」
姫様が顎で指し示した。
祭祀役が先ほど下衣を切り裂いた小刀が今度は茅乃の大きく開かされた脚の間に当てられている。
「ふうん、小さいのに本当に発育のいい娘だったね。」
黒々と縮れた毛が脚の間から床にどんどん落ちていくのが遠目でも分かった。
「女王はね、ツルツルにされるのはあそこだけじゃないんだ。」
祭祀役は小刀を手にしたまま玉座の後ろ側に回りこんでいた。
巫女が茅乃の「翡翠」の簪を引き抜いた。
結われた髪が解けて下に置かれていた金の盆に向かって垂れ下がる。
祭祀役の小刀はその髪を根元からすべて切り取り、盆の上に落とした。
(……………!)
私だけではなく他の婢女たちも息を呑んだ。
五王様が云う。
「処女の純潔の証しとして太陽王に捧げるんだ。」
祭祀役は黒髪を載せた金の盆を今沈みゆく太陽に向かって掲げた。
巫女が濡らした布でせっかく施された化粧を拭き取っている。もっとも泣きはらしてしまってだいぶ崩れてしまってはいたが……
耳飾りや腕輪などの装飾品もすべて外されて、櫓に上がって来た時とはまるで別人になってしまった。
「あの様に生まれたままの姿になって太陽王に身を捧げるんだ。」
―――――櫓の上の巫女が見たことのあるモノを手にしていた。
(⁉……アレは!)
「アレは花見でネズも着けたヤツだよ。」
姫様が愉快そうに指をさす。
そうだ。両のヒダを拡げる大きな洗濯バサミ!
眠ったままの茅乃にも装着され、より引っ張り拡げる為のヒモは左右に跪いた巫女たちが持った。
「アレは痛くないものなのか?」
五王様が私に訊ねる。
「………変な感じするだけで……痛くはないです……」
「昔から使ってるみたいだからね、大事なトコロ痛めない様に工夫されてるよ。」
姫様が説明した。
「―――ところでネズの友達はこんだけされててもまだ女王になりたいかなえ〜」