第6章 夏至祭
夏至祭――――――――
一年で一番夜の短い日に行われる祭り。
城中に女王を祀る白い花か飾られる。
「芳しい宵に。」
と城の人々は互いに夏至を祝う挨拶を交わす。
宴の場となる広い広い城の庭には桟敷や長椅子が置かれ、昼を過ぎる頃には三々五々人々が集まりお酒を酌み交わし始める。
その真ん中に大人の男性の背丈ほどの櫓が組まれ、その上に絢爛豪華な女王の玉座が据えられている。
今日は王族も玉座に座らず下々と同じ様に桟敷の上や長椅子に気軽に横になって祭りを楽しむことになっている。
白い花に囲まれ、大理石と宝石に彩られた玉座に座るのは選ばれた女王ただ一人。
(あれが玉座か―――確かに豪華だけど変な形。肘掛けが高くて前に出過ぎてない?)
暑い夜に開かれる祭りだけに人々の服装は軽いものだ。女中さんや妃様ですら薄い布で作られた身体の線がよく見える衣を纏い、男性は上半身は何も身に着けていない者もいた。
私は玉座の近くに陣取っている、沙良の一団を見つけ歩み寄って挨拶をした。
「芳しい宵に。沙良。」
「ぷっ!お祭りなのにあんたは相変わらず裸なのお?!」
沙良は仲間を引き込んでゲラゲラと笑った。
与えられた衣の中でいちばん華やかで目立つものを身に着け、ピラピラした簪を挿してこってりと化粧を施した沙良たちは気楽な装いの人々の中では裸の私よりも浮いていた。
「このあたりには一王様方もいらっしゃるの。誰よりも綺麗な私を見つけたら『やっぱり女王はあの娘に』ってことになるに違いないわ。
みすぼらしいドブネズミは邪魔だからあっち行って頂戴!」
沙良はシッシッと追い払う様に右手を振った。
(まだ、諦めてないんだ………)
私は半ば呆れて庭の隅の姫様の桟敷に戻った。
長い日がようやく傾き始めると、玉座の周りで真っ白な衣装の巫女役の女中さんたちが女王を讃える舞を舞い始めた。
「愉しんでるか?姉上、仙女たち。」
五王様が酒器を手にやって来た。
「芳しい宵に。」
姫様の盃にお酒を注ぐ五王様は今宵は袖のない丈の短い着物を着ていて、逞しい手脚が周りの女性たちの目を釘付けにしている。
「芳しい宵に、五王。
ところでナンの姿が見えないけど?」
長椅子の上に横たわる姫様が訊う。
(そういえば今日は会ってないな。朝はいつもの様に弓の鍛錬はしてたけど………)