第5章 蛍の化身
夜の婢女部屋にはほとんど灯りはない。
(ここじゃ暗くて見えないや。)
月の明るい夜だった。
私は裏口から離れの後ろ側へ出た。
木の橋が渡してある溜池は建物の後ろ側にも続いていた。
もう蛍が飛び交う季節になっていた。
月明かりと蛍の放つ光で池の水面は鏡の様に輝いている。
私は池の淵にしゃがみ込んだ。
(ここには誰も来ないだろう。)
大胆に膝を開いて両手の人差し指でヒダを拡げ、水面に映して見る。
こんなにもして自分のモノを見ることなどまずなかった。
(あっ…これ………)
割れ目の間に小さな小指の先ほどの「種子(たね)」を見つけた。
(ううん、ネコさんのはもっと紅くて大きくてツヤツヤしていた。)
私はヒダを開いている両手指を離して左手に持ち替え、空いた右手の人差し指で何となく「種子」を触ってみた。
――――ゾクッと経験したことのない疼きがカラダ中に疾走った。
その時―――――
「種子」の下の蕾がわずかに蠢き―――
「コプッ」
白濁した露を吐き出した。
「…ポチャ……」
露は小さな塊となって池に吸い込まれていった。
(何が起きたの??)
戸惑った私は立ち上がろうと「種子」から指を離そうとした――――――――が、
後ろから大きいけれど優美な手が伸びてきて右手をやんわりと掴まれた。
(えっ!?)
パニックになる私。
(だ、誰?もしかして見られていた??)