第4章 蕾酒
朝日がすっかりと顔を出した頃、私はネコさんに手当てされ、清潔な下履きと大きな麻布の頭と両腕のところに穴が空けられただけの簡素な服を着せられて、姫様のお部屋の長椅子に座らせられていた。
「まだお腹は痛むかい?」
「………少しだけ…」
私は蚊の鳴くような声で応えた。
「まったく!まぁだ『べべちゃん』だったとはねえ!」
さきほど姫様は私のカラダに起きた変化のことを事細かに教えてくれた。
『終わるまでは服を着てていいよ!身体冷やして体調崩されたんじゃメーワクだから!』
私は黙って頷いた。
「……動けるんなら、厨房に頼んでおいたお茶を取って来て!」
(………くぅ〜容赦ないなあ、姫様は……)
私はおぼつかない足取りで厨房へ向かった。
「あ、ネズ。燦姫様、具合良くないのかい?」
厨房に着くと出てきた女中さんにいきなり訊かれた。
「え?」
「これをご所望されたからさ。」
用意された茶器を渡される。
「お茶………ですよね。」
「いいや、これは薬湯だよ。あの丈夫な方が珍しいと思ってね、早く持って行っておやり!」
(……姫様、何でもなさそうだったけど具合悪かったのかな?)
「薬湯」を持って部屋に戻ると、そこにいたのは――――――――
……ナン…………いや『七王様』
動悸が全身に伝わった。
「よお。」
いつもと変わりなく声を掛けられる。
今日は私が服を着ていることにもまったく気にかけていない様だ。
「燦ねえはネコさんと町に買い物に出たよ。」
「えっ!?お加減悪いんじゃ………」
「はあ?ピンピンしてたぞ。」
(……………治ったのかしら?)
「伝言を頼まれた。厨房から持ってきた茶はネズが飲む様にってさ。」
(私が?!)
「あと今日は夕方まで帰らないから特に何もしなくていいってさ。」
(!?)
「早く茶飲めよ。何だか知らねえがちゃんと飲んだか確認しとけって言われたんだ。」
私はお盆を茶卓に置き、お茶……いや薬湯を華奢な茶碗に注いでグッと飲み干した。
苦いかと思ったがほんのりと甘かった。
飲んだ瞬間からぽかぽかと身体が暖まり、お腹の鈍い痛みが治まってきた。
「ちゃんと飲んだな。」
…『七王様』は屈託のない笑顔を見せた。
私は思い切って口を開いた。