第4章 蕾酒
卓は離れに戻され、私の拘束も解かれたが、あの後のことはよく覚えていない。
(玉座にいたのは間違いなくナンだった。ナンは王族だったの?……それよりも私のあんな恥ずかしい格好、見られてたなんて!)
いろんな思いが頭の中をぐるぐるしていた。
長い時間同じ体勢(ポーズ)をさせられていたのでカラダが固まってしまったことも加わって、私はまともに立てなかった。
ネコさんに抱えられて湯浴みに行き、寝床に寝かされた後、パンパンになった脚をさすってもらっていたが、痛みはまったく感じず頭の中は依然朦朧としていた。
いつの間にか寝入ってしまったらしく、翌朝いつもの様に早々目覚めたが、いつもと違う下半身の感覚に驚いた。
恐る恐る手をやってみると、生暖かく湿っている。
(………えっ!?)
慌てて掛布を剥ぐと、腰回りが真っ赤に染まっていた。
そればかりではなく下っ腹がズキズキと痛む。
『○☓☓☓##&○##!!』
私は声にならない声を上げて、一回剥いだ掛布を頭まで引っ張り上げた。
『どうしよう、どうしよう……昨夜あんなことされたから、悪い病気にかかっちゃったんだ……………』
一人でどうすることも出来ず、メソメソと私は寝床の中で泣き続けるよりほかなかった。
毎朝早起きの私が起きてこないので、ネコさんが様子を見に来た。
優しくカラダを叩かれても、私は掛布をしっかり押さえてビクともしなかった。
少ししてとうとう業を煮やした姫様がやって来た。
「まだ、いじけてるのかい?!昨夜のことくらいでヘコたれる娘じゃないだろう?」
つかつかと私の寝床に歩み寄ってきて、有無を言わさず掛布を剥がれた。
虫の様にカラダを折り曲げて泣きべそをかいている私の姿を見て、姫様は一瞬驚いた様だったがすぐにいつもの様に低く通る声でフフと笑った。
私は息も絶え絶えに訴えた。
「……姫様、私死んじゃうかも………」
「大げさだねえ!」
手を叩いてネコさんが呼ばれた。