第4章 蕾酒
春の花が咲き乱れる城の中庭で宴は開かれていた。
その真ん中に私が載った卓は据えられた。
「皆様がた、この花見の宴に相応しい美酒をお持ちしました。」
姫様の低いが艶めかしくよく通る声が響くと、バサリと音を立ててカラダの上の布が外された。
あたりのどよめきが聞こえた。
「未だ何人にも侵されていない清らかな処女(おとめ)の蕾の上に吊るされた、その名も『蕾酒』どうぞご堪能くださいませな!」
開かれた膝に重みが伝わった。
(熱いお酒が吊るされたんだ!)
続々と私の周りに人が集まってきているのが気配で分かった。見えないから他の感覚が研ぎ澄まされている。
盃を取ってゆく人たちは皆、私の剥き出しのアソコを覗き込んでいる!
中には息がかかるほど顔を近づけてくる人もいた。
「ご覧のとおり、儚き蕾です。触れれば一瞬のうちに綻びてしまう風情であります。風流人の皆様がたには無粋なことをなさる方はいらっしゃいませぬな?」
軽く笑い声が聞こえる。
姫様がやんわりと触れるなと言ってくれて助かった!こんなとこ触られたらっ!どんなことになるかゾッとする。
もう一つ助かったコトは、この宴には婢女の同席は認められていなかったことだ。(私とネコさんは余興の『道具』だから特別だ。)
こんな姿を沙良に見られたら何を言われるか分からない。
あっと言う間に酒はなくなり、私は姫様の指示でこの場から下げられることとなった。
再び布が掛けられ、卓が持ち上げられる。
ところが私の足元の人夫がバランスを崩した。おそらく宴で気が大きくなった役人さんに多少の酒を飲まされていたのだろう。
グラリと傾く卓。
私はカラダがしっかり固定されていたので転げ落ちることはなかったが、布は滑り落ち、目隠しもズレてしまった。
眩い灯りが目に飛び込んでくる。
目の前は一王様を中心に王族一同が並ぶ『玉座』だった。
その末席で肘をついて物憂げにこちらを見ていた若き王は――――――――――
間違いなくあのナンだった。