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燦姫婢女回顧【R18】

第3章 ナン


大勢の婢女たちで賑やかな洗濯場へやって来た。


「きゃははははは!」

(あの甲高い笑い声は沙良だな。)


沙良は既に婢女たちの中心になって談笑している。
村のお寺でもいつでも沙良が真ん中だった。


「あら、おはよう。」

沙良はまた口を歪めて挨拶してきた。

「今日は『クツワ』を外されたんだあ。
でもまだ服は着させてもらえないのね、まったく初日からあんた何やったのよ!」

取り巻きと一緒に甲高く嘲笑した。


「あたしは、見て!」

クルリと回ってみせた。
昨夜とはまた違う服を着せられている。髪も可愛らしく結われ、とても婢女には見えない。

「あたしの麗姫様はねーえ、とってもお優しいの!お稽古ごともさせてくれるって。今日の午後は舞を教えてもらえるの。

婢女じゃなくて皇女様になったみたいよ!」

ほう………とあたりから溜め息が聞こえた。


「あんた、大丈夫?
でも辞めて帰るワケにはいかないのよねえ〜ビンボウだから。」

そしてまたドッと笑われる。

私は無視して洗濯に集中する。


「あー感じ悪っ、せっかく心配してあげてんのに。それだから運が悪いのよ。

みんな。この娘の不運が伝染るから行きましょ行きましょ!」






――――残された私は黙々と洗濯を終え、離れに戻ると橋の上に今朝の若者が一人でいた。
何か食べているのか口をもごもご動かしている。

「よお。」

私は黙って会釈だけした。

「燦ねえはネコさんと湯浴みに行ったよ。」


脇を通り抜けて部屋へ入ろうとしたら前を立ち塞がれた。

「ナツメの干したのもらったんだ。甘くて美味いぞ、食わねえか?」

紙に載せたナツメを差し出された。

若者は私が両手に大きなカゴを抱えているのに気がつくと、

「……それじゃ食えないか。どれ、食わしてやるよ。」

例の綺麗なユビで摘まれたナツメが私の口に捩じ込まれる。


(………甘い。)

その途端、両目から涙が一粒、二粒………

「おい?一体どうしたよ?」
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