第1章 生意気殺し屋と溺愛殺人鬼
すると男はズボンのポケットから手錠を取り出した。右手と左手、両方の手首にそれを嵌めて、ベットの柵に繋いで固定された。
いくら動いてもガチャガチャ音が鳴るだけで外れる気配はない。
「これ外してっ、」
「やだよ。だって君、暴れるでしょ?」
私に覆い被さるような形になって、足の間に入るから身動きが取れない。 冷や汗が背中を伝う。
「ほらこっち見て。」
男の方を見るのが怖くて横を向いていたけど、顎に手をかけられて無理やり顔の向きを変えられた。
「僕のこと怖い?」
優しく問いかけるけど裏には悪魔の顔が隠されてる。ばっちり近距離で目が合ってその真っ黒な瞳から目が離せない。いや、離させてくれないのかもしれない。
「怖く、ない」
なんとかこらえる。そうでもしないと今にも身体中が震えだしそうで。初めてだ。こんなの。
「その割には泣きそうな顔してるけど。」
「うるさい。」
「ははっ。大丈夫だよ。最初は怖くてもそのうち善くなるから。」
私の唇を指でなぞりながら言った。それが安心できる言葉なのかよく分からなかったけれど。
その時だった。するりと骨ばった冷たい手がお腹をなぞった。初めて触られた。他人に身体を。少しだけぴくりと身体が跳ねた。
「ほっそいねえ。こんなんじゃ僕の受け入れられないかもね」
「は…………?」
「まぁいいや。少しづつ…………ね?」
なにか企んだような笑みをこちらに向けた。瞬間、唇に生暖かくて柔らかいものが当たった。