第1章 生意気殺し屋と溺愛殺人鬼
目覚めるとそこは見覚えのない場所。壁一面に新聞の切り取りがびっしり貼られている。よく見るとそれは全て殺人事件のこと。恐らくあの男が犯したことだろう。
そしてさっきからやけに肌寒い。身体の上には布団が1枚かけられていた。
「服は……っ?」
身体を起こすとさっきまで来ていた服を身にまとっていなくて、キャミソールとショーツのみ。冷たい空気が地肌を伝う。
足音が聞こえてきた。心臓の鼓動は速くなるばかり。もう痛いくらいに伸縮を繰り返してる。
(とりあえず、寝てるふりしとこ………。)
自分でもなんでそんなこと思ったのかわからない。起きてたら酷いことになりそうって予感がした。
慌てて布団を自分の身体にかけてベッドに身を預ける。
足音がでかくなってくる。振動が、伝わる。呼吸が止まる。
遂に気配をすぐ側で感じた。横にいる。冷や汗が伝う。
「起きてるんでしょ?」
ぎしぃっとベットの軋む音。身体が少しだけ沈む。私の脳内は沸騰点に達した。
身体に重さがのしかかった。男は私の首筋を指でなぞった。ゆっくりと品定めするみたいに。
「あ、今ちょっとびくんってした。」
私は少しずつ目を開いた。真っ先に視界に飛び込んできたのはさっきの男の顔。どうやら私に馬乗りになっているみたい。重たさの原因がわかった。
「おはよう。気分はどう?」
面白がってるんだ。気分って。そんなの最悪の一言に尽きるに決まってるのに。
「さいあく。で?こんなとこ連れてきて私の事殺す気。」
「んーん。殺さない。そんな勿体ないことしない。」
「どういう意味?」