第3章 cute aggression
唇が離れたかと思えば、襲ってくるのはジンジンとした痛み。今頃私の首は赤黒い跡が着いているだろう。明日はバイトがある。このタイプの跡は数時間で消えるとも思えない。髪の毛は縛らなきゃだから隠そうにも隠せない。そんなことはお構い無しに次々に首筋に跡をつけていく。
「いっぱい付けちゃった。これじゃ隠せないね」
首がじんわりとした痛みで蝕まれていく。鎖でがんじがらめに縛られるみたいなそんな感覚さえする。もう、この人からは離れられない。
「やだ…………」
「隠しちゃだめだよ?ちゃんと俺のって印、見せつけないと」
そんなこと言われるけど、 こんなに首に赤い跡が着いてるなんてバイトどころじゃない。何とかして隠さないと。
「そんなことしなくても、私はどこにも行かないよ」
「んーん。わかんないよ。澪はふらーっとどっか行っちゃいそうだからね」
何を言っても信じてくれない。他の男の人達は分かりやすく私に興味なんかないことくらい分かっている。浮気なんてするはずないのに。
「私に興味なんか示さないから大丈夫」
「澪が鈍感なだけ。狙ってるに決まってるでしょ?ちゃんと自覚持って」
「わかったよ」
どうしてそんなに私に依存するんだろう。私には魅力のひとつもない。それなのにこの人は私に執着してる。
「澪しかいないよ、俺。どこにも行かないで」
そう言って私を強く抱き締めた。私も腕を背中に回してそれに応える。私の事をこんなに愛してくれるのはこの人しかいない。私だってなんだかんだ言って碧から離れられない。
「可愛い。だいすきだよ」
そう言って私の人差し指を強く噛む。ギリギリと痛めつけるような噛み方をする。
「いたいっ、」
そう言うと口を離して噛むのをとめる。指には歯型がくっきりと残った。見ているだけで痛々しい。
「わざと痛くしてるんだよ」
わざとの意味が私には理解できなかった。