第1章 生意気殺し屋と溺愛殺人鬼
男は不気味に笑ってまた、首筋に吸い付いた。びくんっと身体が反応してしまう。そのまま何度も場所を変えて口をつけた。息が荒くなって苦しい。
「やだそれ、っやめてっ…」
最後まで言いきれない。語尾が小さくなってしまう。お腹の奥がむず痒い。
「なんで?きもちいでしょ?それともこっちの方が好き??」
「なっ、んっ……!!!」
唇と唇がくっついた。ふにりとやわらかいものが押し当てられた。唇を食べるようにゆっくり噛み付く。角度を変えて何度も。
なんだろう。頭がぼーっとして………。
強ばっていた身体も次第に力が抜けてきていた。生理的な涙が出てくる。
唇が離れた時にはめのまえがぼやけて見えた。
「あぁ。なんだろ、これ。」
さっきまでの殺気とは打って変わって甘ったるい視線をこちらへ向ける。
「なに……っ」
「んー、ふふっ。君を今すぐ僕のものにしたい。」
その口はにっこりと弧を描く。その笑みにぞくぞくと寒気がした。
「意味わかんないんだけど。」
この男の言ってる意味がさっぱり分からない。考えれば考えるほど頭が混乱してくる。
「どうする?僕のものになる気ある?ないなら今すぐここで殺しちゃう。」
甘ったるい目はそのまま、優しい顔をしているけど言ってることはぶっとんでる。
「そんなの死んだ方がまし。」
「その顔、僕のこと煽ってるでしょ。」
睨みつけたけどそんなのまるで効果なんかなかった。
「煽ってない。」
「君がそう思ってなくても男はそう捉えるんだよ。」
顎に手をかけくいっと掬われる。
「今日から君を僕に逆らえないように躾てあげるよ。その生意気な口も聞けないようにね。」
男の手が私の頬を撫でる。恐怖で身体が動かない。ごくりと唾を飲み込む。