第1章 生意気殺し屋と溺愛殺人鬼
「手、震えてんじゃん。」
「つっ、」
拳銃を握る手はなぜかカタカタと震えてしまって標準が定まらない。彼はそれをいいことにゆっくりとこちらへ近づいてくる。
手首をがしっと勢いよく掴まれた。その反動で拳銃を地面に落としてしまった。手に込められ力は緩むことはなくて、手首が痛む。
でも左手は使える。ベルトについているナイフを抜き取ろうとしたその時
「だめだよそんなことしちゃ。」
左手も掴まれた。そしてそのまま壁に追いやられる。背中にはひんやりとした固いものが当たった。目の前に男の顔があって身動きが取れない。両手首を片方の手で壁に押し付けられた。
ベルトにある武器を1つづつ抜き取られる。取っては地面に落としてカタッと音を鳴らす。その音を聞く度自分の無力さに嫌気がさす。みっともない。任務、失敗してる。
「こんな物騒なものいつも持ち歩いてるの?」
まじまじとナイフを見ながら言う。
「その汚い手で触らないで」
「君さ、自分が置かれてる状況理解したら?」
瞬間顔めがけてナイフを突き刺す。それは顔ギリギリのところで止まった。
目を瞑ったら負け。怯えたら負けだと思って私は精一杯睨みつけた。
「何その目。」
尋常じゃないくらいの殺気がその視線に込められてる。
「もっと怯えなよ。つまんない。」
ナイフは首に当てられてほんの少し、切りつけられた。つーっと血が垂れる。ヒリヒリして痛い。男は私の首に顔を埋めてその血を舐めとった。変な感覚に顔を背ける。
「んっあ、ぅっ」
しまった、と思った。変な声が出て慌てて下唇を噛む。
「へえ、そんな声出せるんだ。」