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愛執染着

第2章 王子様の秘密


「でなに?このことみんなに言いふらすわけ」

「言いふらして欲しくないんですか」

明らかに私が弱みを握っているはずなのに、なぜか彼は余裕そう。どうして?

「別に。言いふらしてもいいよ?どうせ誰も君のこと信じないだろうし」

「は?」

この人ほんとうにむかつく。この余裕そうな顔を崩してやりたいとさえ思った。

「じゃあ、みんなにばらしてもいいんですか?」

「お好きにどーぞ。ああでも」

耳元で、冷たい声で囁いた。まるで体に毒が回るみたいに動かなくなる。

「そんなことするわけないよーくらいで流されるんじゃない?」

「それってどういう…………」

「だってそんなもんでしょ。みんなから信頼されてんだよ、俺」

にやっと確信したような気味の悪い笑みを浮かべた。嫌なほど説得力があって心が抉り取られたみたい。

「…………うぅ」

「証拠だってないでしょ?ね、だから言っても無駄だよー」

ああ盗撮しとけばよかった!と後悔する。別にばらしたところで私に利益は無いわけだし。そんなことしたって無駄だけど。

「別に最初からばらすつもりも無かったので。このことは誰にも言いませんよ」

「ありがと。たすかるな」

さっきのゲスい笑みじゃなくて。いつもの王子様スマイルを私に向けた。まるで別人だ。

「じゃ、そういうことだから」

「え、ちょっと……………」

「これから女の子と予定があるんだよね」

ばいばい、とだけ言って彼はその場を去っていった。

「ほんっと何なのあの人」

自分の立場を利用する悪いやつ。私は今日、王子様の裏の顔を知ってしまった。
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