第1章 生意気殺し屋と溺愛殺人鬼
耳元に響く冷たい声に身震いした。いつまで経ってもこの人の事掴めない。いつもペースを乱される。私ばっかり。
「ねぇ、違う?」
彼は低音でそう囁いた。警報音が頭の中に鳴り響く。その先が怖くて呑まれてしまう。
「そう、かもね」
それを聞いて彼は笑う。それでも、安堵はしきれない。私だっていつこの男に殺されるか分からない。毎日死と隣り合わせって訳だ。甘やかされてるってことは何となくわかるけど、心を開くには早すぎる。
なるべく彼が機嫌を損ねないようにしないと。
自らの意思でゆっくり身じろいで彼の方をむく。自然と向き合う形になって彼の顔が間近にある。あと少しで唇が触れそう。
「はぁ……ほんっとに、つっ、」
「?」
「僕ね、どんどん好きになってく。澪ちゃんのこと。」
引き寄せられて顔に固い胸板があたる。心臓の音がはっきり聞こえて変な気分になる。
「あっそ。」
好きって言われて嬉しいはずだけど、素直になれない。喜ばなきゃいけないのに。
「僕がどれだけ澪ちゃんのこと好きか知らないでしょ?」
「知りたくもないし。」
「ふふっ。」
____殺したいくらい好きだよ。