第3章 セイロウ島
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翌日昼過ぎ。ローが目を覚ますと、見知らぬ全裸の女が二人、抱きついていた。
(いつの間に……)
結局昨夜はマルガリータのあと、消化不良だろうともう二人が順番に来て、夜明け近くまで寝させてもらえなかった。
「頭痛ぇ……」
大酒飲んで最後はやけになってた気がするが、記憶はあいまいだ。
絡みついてくる女を押しのけてシャワーに行こうとすると、狸寝入りだったらしい女に手を掴まれ、豊満な胸へと誘導された。
「やめろ」
「あん。船長さんったらつれない……」
「……やめねぇならオペして貧乳にするぞ」
「!? いやこれ商売道具だから……っ」
慌てて飛び退いた隙にさっさとベッドを下りてバスルームへ向かう。
もうひとりの女はベネッタで、大いびきをかきながら完全に爆睡していた。こっちはただ単にベッドを間違えた可能性が高い。でなきゃ娼婦としてちょっと適性不良と言わざるを得ないだろう。
(ああクソ、香水くさいな……)
まとわりつく女の匂いをシャワーで洗い流しながら、昨夜の嬌声を思い出し、ローはごつっとバスルームの壁に頭をぶつけた。
「飲みすぎたんだ……」
マルガリータは意地を張ってたのか、初めてで緊張していたのか、ほとんど声を上げなかった。隣から聞こえてくるの声のほうが大きくて、すべての明かりを消した真っ暗な部屋の中、時々を抱いているような錯覚に陥った。
泣きじゃくるクルーの声に興奮して、ひどく夢中になった。禁忌だと理解しながら。
「忘れろ。酔ってたせいだ……」
自分に言い聞かせてローは記憶と感情の消去を図る。それができなければ、これまで通りと航海なんてできない。
『まだ?』
『まだシャワー中よ。押さないで!』
『本当にいい体よね。抱かれたい』
『マダムが億超えするって言ったら絶対当たるもの。今のうちにコネクションを作っておきたいわ』
バスルームの鍵穴から覗きながらささやく女たちの声が聞こえてくる。あまりしつけが良くないようだ。バスルームに鍵があって幸いだった。