第11章 死者の夢
ピピピ、と鳥の声がして、ふとローは顔を上げる。トネリコの木の上に一羽の鳥が止まっていた。
(ヒヨドリじゃない……)
とコラソンがエサをやっていた野鳥ではなかった。
赤いくちばしに、薄いグレーの羽。ローはその鳥を知っていた。が背中に彫った、彼女の象徴ともいえる白夜に飛ぶ鳥だった。
「……?」
呼びかけると、キョクアジサシは美しい瞳でローを見た。そして羽を広げる。翼の内側は純白の羽で覆われていた。
「待ってくれ……っ!」
手を伸ばすローを超えて、キョクアジサシは飛び立った。
追いかけようとして何もできず、ローは地面に転んだ。生涯で月と地上の距離を3度も飛ぶ鳥はまっすぐに空の彼方へ飛んでいく。
嗚咽がこぼれて仕方なかった。
ローの鳥は飛び去ってしまったのだ。もう二度と、戻ることはない。