第3章 セイロウ島
一気飲みにだいぶびっくりした様子で、マルガリータはローをまじまじと見た。
「……なんだよ」
「そんなに飲んだらできなくならない?」
「そう思うなら寝かせてくれ」
手で追い払って、ローはベッドに横になる。だがマルガリータは部屋から出ていこうとはしなかった。妙にもじもじして何か言いづらそうにいていると思ったら、眉を吊り上げ、「女が嫌いなの!?」と言い出した。
「……男が好きかと聞いてんなら答えはノーだ。だからって名前を呼ばれるのも嫌だって言う女を無理やり襲えって? そういう趣味はねぇ」
「う……」
自分の態度の悪さを自覚したのか、マルガリータは狼狽した。
「わ、私が嫌なら、他の人に代わってもらうわ……」
うつむき、震えてマルガリータは言った。
本人が嫌だと言うならともかく、そういう女にとっての不名誉な真似をする気はなかったので、嘆息して体を起こすとローは「明かりを消してもいいか」と声をかけ、返事が来る前に全部消してしまった。
「こんな真っ暗じゃ何も見えなくない?」
「体を見られるのが嫌いでね」
しれっと言ってローは服を脱ぐと、ベッドの上でマルガリータにのしかかった。
「見られるのを恥ずかしがるような体じゃないじゃない」
体を触ってマルガリータは追及する。うるさいなと思いつつ、酔いが回っていたのもあって、ローは説明した。
「昔、病気だったんだよ。醜い痣が体中にあって、医者にも化物だのモンスターだの言われた。だから――」
ぎゅっと抱きつかれ、ローは自分が喋りすぎたことに気づいた。
「ごめんなさい……」
か細い声で本当に申し訳なさそうに謝られ、ふっとローは笑った。
「……なんだよ。素直に謝れるんじゃねぇか」
額にキスすると、マルガリータは身を固くした。
「……なんかあんまり慣れてねぇんだな」
自分が動くのが別に嫌ではないのでローは単純に感想を言ったつもりだったが、まさかのビンタが飛んできた。
「仕方ないでしょ、初めてなんだから!!」
(初めてだからって客殴るか……!?)
ビンタの衝撃に軽く呆然とした5秒後。待て、とローは勢いよくマルガリータから離れた。
「男が初めてってことか!?」